ロストガール


えーっともうすっかり、私はどこにいるの?状態ですけど、ひとつ大事なことを忘れていました、、、。いまユーロスペースのレイトショーで『ロストガール』という映画をやっていて、もうそろそろ、もしかしたら今週金曜くらいで終わっちゃうんじゃないかと思いますけど、これはとても興味深い映画だったので未見の方はぜひ今からでも劇場に駆けつけてほしいです。


摂食障害というものをモチーフにしながら男女(夫婦)の関係を描いた映画なんですけども、非常に面白いのは、この夫婦の権力関係がパタパタとめまぐるしく入れ替わる点です。いわゆる、共依存、といってしまえばそれまでなのですが、ある意味ではものすごい人生の「暗部」を、こういうふうに描こうとする人がいることに私は心底驚きました。と、驚いたのは兄もきっとそうで、それというのも兄はこの「暗部」から逃走したという抜き差しならない過去があって、こないだあえてその「暗部」に向かい合うために6年前のあの場所を訪ねたようですけども(そして案の定すさまじいダメージを負って次の予定に1時間半も遅刻して多くの人に迷惑をかけてしまったらしい、マジすんません、、、)そういう心境に兄が陥ったのもいろいろ理由があるとはいえこの映画を観てしまったせいもあると思います。


で、ポイントは、山岡大祐監督の「暗部」の描き方で、一見するとひどいものをひどい形のまま描いているようにも見えるんですけど、実は全然そうじゃなくて(と少なくとも私は思っていて)、実際にはここまで極端にパタパタと権力関係は入れ替わらないというか、微妙に曖昧なグレーゾーンが漂っているからこそ「暗部」に対して人間は無力でなす術もないのですが、そこを山岡監督はあえてデフォルメするために(もしかしたらマンガ的な)非・自然主義リアリズムの手法を導入した。ひとことでいえば、とってもコミカルなのです。それによって、本来見えないものが見える。いわば直視できない大陽に対してサングラスをかけるような、でもそれは陽光から逃げているわけではなくてむしろ陽の光の下で生きていくための苦肉の策なのだと思います。(そしてそれはかなり成功していると私は思います。映画を観ているうちにだんだんその世界観に馴染んでくるから。)


ちなみに山岡さんのどこかのプロフィールに「ダメ人間を描くのが得意」みたいなのがあったんですけど(笑)、ぜひまたダメ人間の出てくる作品、あるいは出てこない作品を撮ってほしいです。あー、今ホームページ観たらやっぱりあと3日だわ、、、ロビーで本格的にドリップした珈琲なんかも飲めるらしいです!


『ロストガール』21:10より渋谷ユーロスペース
http://lost.girly.jp/