「ポール」と伯爵夫人が衝立の陰から呼んだ、「何か新しい小説を届けておくれでないか。でも今様趣味のだけはお断りですよ。」
「とおっしゃると、お祖母様。」
「つまり、親を踏みつけにする人間や、水死人の出て来ないのにしてもらいたいのさ。私は水死人はあまり好かないのでね。」
「お望みのようなのは今どきありませんよ。いっそロシアのではいかがです。」
「おや、ロシアに小説があるの。じゃあお前、それにしましょう。きっと届けておくれ、待っていますよ。」


プーシキンスペードの女王神西清