風が吹けば


強い風が吹きつける。一緒に歩いていたクライアントの女性が飛ばされそうだ。その巨大な荷物を捨てろ! と言うと彼女は鞄をあけて、ジョージ・オーウェル全集やら洋服やらがバサバサと風に運ばれていったのだが、ただひとつ、弓道の道具一式だけは残して鞄を閉じてなんとか室内に転がり込んだ。


しかし彼女のスカートはめくれあがったまま、生理の血糊もついているので、「失礼ながら」と苦言を呈するも、「いいの、乾かしてるから」と言って彼女は耳を貸さない。鏡をみると私の髪が伸びてなんだか顔つきも女性のようになっているので、それならばまあいいかという投げやりな気持ちになる。


女性めいた私はたいへんワガママになっていて、塵ひとつ落ちていることが許せなくてすぐに癇癪を起こすのだが、けれどもそれは私自身の部屋なのでけっきょく私がずぼらなのだった。