DVD「ライフ・アクアティック」

公開中の「ダージリン急行」を観る前の予行演習として、前作「ライフ・アクアティック」をDVDで。恥ずかしながらウェス・アンダーソン監督の映画は初体験。なるほど、いや、これはこれは。


世界的に有名な海洋冒険家のスティーヴ・ズィスービル・マーレイ。彼は自身の冒険を記録する映画監督でもあるが、その名声はもはや落ち目で、決死の覚悟で撮った「ジャガー・シャーク」(笑)との闘いもインチキではないかと疑われ、次の冒険に出る資金も心許ない。そんな折り、若い青年ネッドオーウェン・ウィルソンが彼に声をかける。ネッドの母親とスティーヴは30年前に恋仲であり、もしかすると二人は父子かもしれないのだ。確かな証拠もないまま、スティーヴは自らの冒険隊にネッドを加え、ジャガー・シャークを見つけて親友の仇をとるため、いざ海へとオンボロ船で繰り出すのだった。


といった滑り出しのストーリーで、ここに妊娠中の美人記者ジェーンケイト・ブランシェットをはじめ個性的なキャラクターが絡んで来るのだが、いやこれが、まったく先の読めない展開でわけがわからず、あまりのメチャクチャな壊れっぷりなのに全部ビル・マーレイだから許せてしまうという、ある種の反則技を用いて最後まで行ってしまう、そして終わってみればちゃんと物語があったような気がしてなおかつ感動に包まれるのだから不思議。しかし細部への凝りようをみるに、すべて計算づくなのかもしれません。映像にも無駄がなくきわめてポップで美しいのだ。


実は「ダージリン急行」の宣伝文句に「スピリチュアルジャーニーがどうのこうの」という作中の台詞を部分的に切り取ったコピーがあって、しかもこっちは舞台がインドだし、いわゆるスピリチュアルものだったらどうしようと警戒していたのだけど、「ライフ・アクアティック」を観るかぎりそんなのまったくの杞憂であるに違いなく、むしろ失礼しましたアンダーソンさんと謝りたいくらいです。デビッド・ボウイをアレンジしたラストの曲もあまりに素敵。

ライフ・アクアティック [DVD]

ライフ・アクアティック [DVD]