ウォーリー


WALL・E/ウォーリー』観ました! ピクサー&ディズニーおそるべし、ってのが正直な感想です。上映前に前座として短編があって、そっから本編に雪崩れ込むのもディズニー的世界への引きずり込みに成功している感じだし。『2001年宇宙の旅』へのオマージュは、あのチャー、チャー、チャーン、チャチャーン!っていう「ツァラストラかく語りき」が流れるのからしてああーって感じですけど、そういう参照系は他にもあるのかな、って思って、例えば戦艦に侵入するシーンとか◯◯のシーンとかって明らかに『スターウォーズ』だし、◯◯は『エイリアン』だし、◯◯はなんだか『カッコーの巣の上で』みたいだし。(←わたし的にいちばんココが良かった)


ところでヒロインロボット=イヴのデザインが白くてシンプルなのって、ポスト綾波レイというか、猟奇的な彼女? サイボーグ彼女? の成れの果てがアレ、ってことですよね、きっと。彼女があまりにも高速で動くために、この映画の情報量はものすごいことになってると思うんですけど、キッズたちは大丈夫なんでしょうか? オトナはすでに「あーこれはこういうことね」ってことで処理できると思うんだけど、キッズたちはあの高速モードについていけるのか? それとも、あれくらい高速でないと、今時のキッズの心は動かないってことだろーか。私が映画館に行った時はカップルばっかでキッズたちの姿があまり見えなかったのでよくわからず。


まーとりあえず私的には、ウォーリー父とか、ウォーリー母みたいなのが出てきて要らぬ血筋の正統性やらユング解釈みたいな話、にはならなかったんでかなり安心しました。よく描かれるようなスクエアな感じのヒューマニズムに対しても抑制が効いていると思います。地球生命体最後の生き残り(?)で、この作品においてイヴと並んで無敵キャラ扱いになっている虫が明らかにGなのとか、あのジョンだかなんだかって名前のおっさんが「あの子は見たことあるぞ、ウォーリーだ!」って叫んでて、その反面明らかにジョンを含めて未来の人間たちの個体識別が不可能なのとか、全編にわたって皮肉たっぷりで、かつフツウに笑いもある。もちろんラストシーンから先、人類たちは政治を発見し、資本を発見し、権力を発見して、ぜったいそう簡単に幸せにはなんねーだろーなーって思いますけど(笑)、とりあえずイヴとウォーリーに関しては人類が滅びようがどうしようが太陽光発電がつづくかぎり幸せだろーなーって思うしそのあとがいろいろ想像できる。よくあるラヴストーリーが、男女がくっついたところでエンディングを迎えるけどそのあとの幸福がほとんど想像できないのに対して、この二人(二体?)に関しては想像できる、ってのは、セカイ系ストーリーを描くうえでは大事なポイントだと思います。


ひとつだけ難をあげるとしたら、ほとんどすべてがCGによって作り込まれた世界の中で、私たちはいかにしてリアルを感じるのかってことです。たとえばこの話をリメイクして、離れ小島で延々とゴミ処理をして宝物を集めてる青年がいて、そこに美しい女の子がやってきて、実はその子がスパイで、という物語があったとしたら、それはそれで面白いんじゃないか。そして私は、そういう物語を想像した。生殖能力をもった人間が主役で、美しい部分もあれば醜い部分も晒すような物語を。でもそれはすぐ答えが出ることでもないので、ひとまず保留!とします。