りたーんず、3巡目へ

さて、「キレなかった14才♥りたーんず」はすべての演目が初日を終え、2巡目に入っています。今日の夜から3巡目に突入。日程的に公演日の間隔がかなり空いているため、演出家や役者にとっては大変そうですが、まあそれはさておき、ここらで現時点での僕なりの感想を書いておきたいと思います。6作品それぞれに方向性が異なるのであんまり意味のないことですが、あえて大別するならば、個人的な物語から普遍を志しているのが神里・柴の作品、14才的なるものへのレクイエムを歌うことでそれぞれのプリミティブな原型を掴み出しているのが中屋敷・白神の作品、そして当時キレなかったとはいえ、抱え持っていた狂気のようなものを今ここに来てそれぞれの形で昇華させようとしているのが杉原・篠田の作品だというふうに感じる。予約状況などはこちらでチェックしてください。


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神里雄大『グァラニー〜時間がいっぱい』

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どうしてこんなにピュアなのか。ふだん共感とかはどうでもいいと思っていますが、今回の6作品の中ではもっとも共感をおぼえます。2回観て2回とも泣いた。狭いところに投げかけた結果、逆に普遍的なところに抜け出ることに成功している。でもこの作品のポテンシャルを考えると、まだもう一回り大きくなる予感もある。地理的、歴史的な広がりとして、大きなものを感じるのだ。死んでいった名もなき人たちの存在が見える。ちなみに女優たちがちょっとワガママっぽいところもグッとくる。

▼百年・樽本樹廣 http://hyaku102.exblog.jp/9637812/
▼古谷利裕 http://d.hatena.ne.jp/furuyatoshihiro/20090423


柴幸男『少年B』

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個人的にはほとんど共感できない作品です。でも昨日の2回目公演でも「心に刺さった」という人が続出だったので、この作品に反応できない自分は心がない人間なのだともはやあきらめて異邦人の気分に浸ることにします。けれど、『四色の色鉛筆があれば』はほんとマジで最高だったけど、柴幸男はああいった得意の構造づくりは今回はやらないで、戯曲を書くという新しいチャレンジをしたのだし、それが作風の幅を広げること、ひいてはより多くの観客を獲得することにもきっと繋がるのだろう。でも正直なところ、柴幸男の演出家/劇作家としての成長や成功といったものに僕はまったく興味がないので(柴くんのことは好きだが)、とにかくもっと気持ち悪くなれよと思う。まだ全然、カッコつけてる感じがして、テキストが透けて見えてしまう。もっともっと、ゴロッとしたものが観たいです。僕個人としては。ちなみに序盤のグルーヴ感と、後半のとある場面は最高。こういうのができるのは演劇の分野ではたぶん柴くんだけ、という気がする。


中屋敷法仁『学芸会レーベル』

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今回の6作品の中で、おそらくもっとも人気を集めるであろう演目。すでにここで書いたので繰り返しになりますが、これぞプリミティブ、ということを見せてくれる傑作。ただ、2回目は1回目より身体のキレ味は増したものの、逆に気合いが入りすぎたぶん、エネルギーの密度が濃すぎるようにも感じられた。そのあたりの微妙なバランスがうまくハマると最高だと思うが、もちろん、天才・中屋敷はそんなこと百も承知だろう。本当に、観ると身体が喜ぶのがわかる。美男美女が勢揃いした競演っぷりの中で、ダニエル君(今村圭佑)の「ケェーッ!」がもの哀しく鳴り響く。


白神ももこ『すご、くない』

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2軍の魅力を存分に発揮できているように思える。2軍? いやべつに3軍でも8軍でも結構です、といった佇まいがここにはある。だってタイトルからしてそうだもの。


そんな白神ももこの『すご、くない』は6作品の中で唯一のダンスなのですが、もうダンスであるのか演劇であるのか、といったことはどうでもよくなってきました。わからなくなってきました(笑)。ダークホースだと思います。いや馬ではなくて妖精です。もう、めっちゃ好き。正直いって、僕はももちゃんのファンになりつつあるようです。モモンガ・コンプレックス、これからも観に行きたいです。もうほんと俳優たちの、あの愛すべき感じも。たまりません。



杉原邦生『14歳の国』

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1回目観て、なんてつまらないんだろう、と思った。2回目観て、やっぱりつまらなかった。が、2回目は何か光明が見えたような気がした。これは面白くなるかもしれない。この作品の俳優たちはまるで兵士のようであり、そのことに羨望する、と神里くんが言っていた。たしかに昨日の公演でも、彼らは粛々と討ち死にをしたのだ。誰のために? 演出家のために? いや、たぶんそうではないだろう。最初はそうだったかもしれないが、だんだんそうではなくなってきたのだ。だから昨日の死は、決して無駄死にではなかった。彼らはもうすでに何かを達観し始めたような表情を浮かべている。だんだん息も合いつつある。その中にあって、主役の山崎皓司と演出家・杉原邦生の1982年生まれコンビが次なる闘いに向けての作戦会議をしていて、それは友情のようであり、伍長と軍師のようなある種の緊迫感を孕んでもおり、終演後に彼らと少し話をしたのだけど本当に面白くなる予感がした。大化けの可能性もある。でも、どんなに変化したところで、彼らが死に向かって進んでいることに変わりはない。なんという覚悟……。人生をかけて挑む死。彼らはマジで本気です。ほんとに、くっだらねえことにマジなのです。

▼岸井大輔 http://14199702091982.seesaa.net/article/118006112.html
▼神里雄大 http://ameblo.jp/kamisatoy/entry-10248071440.html


篠田千明『アントン、猫、クリ』

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今回の中で最大の問題作。2回目の公演は本当にヤバかった。観ているあいだずっと気持ちよくて、脳が痺れるような感じ。この演出家は実はとんでもないことをやらかしている。この作品の誕生と生成に立ち会えるとしたら幸福以外の何ものでもない。たぶん当人にその気負いはなく、ただ美しいものを観たいがために奉仕するそれは、ほとんど巫女のようでもある。彼女たちが召喚するものによって、だんだん充たされてくる音。言葉。舞台。


題材はほんとうに小さくて、馬鹿馬鹿しくて、ちょっぴり可笑しい世界。そこから、一気に。


愛とはつまりこういうものなんだ。


伊藤亜紗 http://assaito.blogzine.jp/assaito/2009/04/post_b890.html

七里圭 http://www.nemurihime.info/CONTENTS/diary.php