「HB」第3号チェーン店特集


橋本倫史さんが編集長を務める雑誌「HB」が発売されたのでさっそく渋谷ブックファーストで入手しました。阿佐ヶ谷ロフトのイベントの時に「次はチェーン店特集をする」と仰っていたので楽しみにしていたのです。最近は「路字」をやっていることもあって町との距離感が近づきつつあり、町にいる時間が長くなるとチェーン店を使う機会も増えるので、今号の特集がどういう内容になるのか非常に楽しみでした。
http://d.hatena.ne.jp/hbd/20080227


まだ買ったばかりで仕事的斜め読みなので個々の記事についてしっかり読み込めてないという前提ですが(ごめんなさい、あとでちゃんと読みます)、ざっと読んだ印象では橋本さんのリードに誘われるようにして個々の書き手がそれぞれの個別のチェーン店体験を語っているという構成。奥付を見ると吉祥寺バサラブックスの福井さんを除いて全員80年代生まれで、もしかしたらこうした個人的体験から出発するというのは80年代的な特性のひとつなのかもしれないし、あるいは「HB」の編集方針なのかな?


さて、そうやって斜め読みをしたときにどこに引っかかるかというと、やっぱりこれは一番最後におさめられている小嶋沙紀さんの連載「hatchback'95」なのです。文章が特に流麗というわけでもないのに、なぜかこの連載は情景がまざまざと浮かびます。もちろん「1995年」というテーマ設定でつかんでいる部分はあるし、今回扱ったサニーデイ・サービスの「東京」が私も好きだってのもあるけど、たぶん思うに、この書き手には何かしら訴えたいものがあってそれが読者である私の心をくすぐる。彼女(?)もやはり個別の体験から出発していて、そして最後まで個別の体験に終始するのですが(実はさりげなくチェーン店の話もしている)、たぶん飛び立とうと思えば簡単にできてしまうのにあえてそれをしない抑制がある。それゆえにノスタルジーを回避して1995を語ることに成功している……。この文章はきっと当の曽我部恵一さんが読んだらものすごく感動するだろうし、私も共感や懐古とはまったく別の回路を刺激されて涙が出ました。というか今また読み返してみたけどめっちゃいい文章じゃないですか! なぜかこの人は奥付のプロフィール欄に名前がないので、誰かがペンネームで書いているのかなとか思ったりもするけど、とにかくこの連載は私としてはイチオシで、これはほんとに「HB」でしか読めないからたぶん私は次も「HB」を買うと思います。*1

*1:うっ、同じタイミングで仲俣さんも「HB」を読んだらしくしかも同じ連載が好きらしい。被ってしまった……。http://d.hatena.ne.jp/solar/20080301