人に会うことについて(必読)


とろとろと眠り、変な夢を見て、予定より早く起きたら少し不安な気持ちになりました。人に会うのは楽しいのですが、いろいろなものを感受してしまうので、どこかから、不安の種のようなものも貰ってしまったのかもしれません(風邪みたいなもので、時にはそういうこともあります)。その不安というのは、「人に会うこと、そしてそれをブログに書くこと」に関するもののようであり、単に私個人の問題ではなくて、それなりに責任が生じることであるとも思います。で、自分なりに考えていて思い出したエピソードがあったので、それを書くことで、現時点での答えに代えたいと思います。



編集の仕事をするようになってすぐの頃に、とある方に仕事でお会いする機会に恵まれました。その方は当時、この地球上に生きている人の中で、もっとも会いたいと思っていたくらいの人で、だからいきなり会ってお話できることになって、私はものすごく舞い上がってしまったのです。で、打ち合わせをすることになり、その方ともうひとりの方と私と三人の予定だったんですけど、もうひとりの方が遅れてきたので、部屋にふたりきりになった。今でも駆け出しみたいなもんですが、当時はほんとのほんとに駆け出しで、経験もまったくない。それでどうにも間が持たなくて、つい、「実は私はあなたの、ものすごいファンなんです」と伝えて、「私なんかがここにいていいんでしょうか?」的なことを口走ってしまいました。その時に、その方がさらりと言ったのです。

「なにか、あなたがここにいてはいけない理由があるんですか?」


実に淡々と発せられたその言葉を聞いた瞬間に、私の中で何かが死にました。それは決して、「大丈夫、いてもいいよ」なんていう承認の台詞なんかではなくて、ようするに編集者としてのプロ意識を要請する言葉だったのです。つまりは、「おい、お前しっかりしろよ、これは仕事だぞ」という意味だった。今でも、誰かに会いたい、会ってみたいと思ったり、実際会って気分がぶわーっと高揚するということは当然ありますが、あの瞬間より前に私の中にあったある種の感情は、もはや完全に死んで、二度と蘇ることはないでしょう。そして現在、私は人に会って、本気で楽しいと思って、楽しいと思うこと(だけ)をここに書いてますけど、でもそれは見方によっては所詮幻想を作り出しているにすぎなくて、現実には私は、ある意味ではとうの昔に死んでいる。だからこのブログは、いわばリビングデッドが日々積み上げる幻想にすぎないのです。


さて変な話をしましたが、以降は、このブログも通常営業(なんじゃそれ)に戻ります。