ドロップアウト本棚


感染せよと小説はいう。感染するなと何ものかが抗う。




さて、mixi下北沢系コミュで「本棚を譲ります」という書き込みがあり、それに手を上げたら譲ってもらえることになって、見知らぬ人の家に取りに行った。とても普通には運べないので、K君にリアカーを出してもらった。


感じのいい青年が出迎えてくれた。部屋はとても綺麗で塵ひとつ落ちていなかった。無駄なものがない。テーブルの上に置かれたミルが珈琲への偏愛を感じさせる。なにしろフラスコはふたつもある。そして本棚(私がもらうやつではないもの)には古びた函入りの日本文学全集が並んでいた。全体に、趣味がいいと言わざるをえない。その中で放擲されることになった本棚というのは、その〈趣味〉にそぐわないものであり、「明らかにひとつだけ部屋から浮いてるんです」と青年は言う。私は喜んでその身寄りのない本棚を頂くことにした。お礼にモロゾフで買った洋菓子を青年にあげる。




深夜2時、ダビデさんが秋刀魚を焼いた。秋刀魚の匂いが家じゅうに広がった。