ネオ・トロピカリアほか


東京都現代美術館で開催中の「ネオ・トロピカリア ブラジルの創造力」。同時開催で、藤原大+イッセイミヤケクリエイティブルーム&カンパナブラザーズによる「COLOR HUNTING in BRAZIL」と、さらに森山大道&ミゲル・リオ=ブランコの写真展「共鳴する静かな眼差し」もあってかなりの充実ぶり。近年観た美術展の中でおそらくいちばん楽しかった。扉を開けると次に何があるかわからないという、これこそまさにアリス的世界。楽しすぎて時間を費やしてしまい、常設展にたどりつく前に閉館に……。


ちなみにこの「ネオ・トロピカリア」はその名の通り、1960年代後半にカエターノ・ヴェローゾとジルベルト・ジルらによって始められたトロピカリズモ運動を意識した展示ということらしいのだが、60年代当時のそれが持っていた(であろう)反体制的なイメージはほとんど感じられず、むしろ自然や食生活との親和性を重んじるような、人間(生命)の再発見といった方向性が色濃く感じられた。でも全然「ロハス」なんかじゃないよ。もっとダイナミックで力強くて、ユーモアに満ちた展示でした。いやー、楽しいわーこれ。とにかく童心にかえって遊べます。


なお、作品としてはアシューム・ヴィヴィッド・アストロ・フォーカス(avaf)による「absurd vanilla anus flavor」と、オスジェメオス(osgemeos)の壁画がインパクト大でした。前者はヘッドフォンを付けたまま立ち位置や角度を変えることで異なる音を拾って遊ぶというもの。後者は松本大洋をもっと抽象的にしたような絵。「osgemeos」とはポルトガル語で「双子」の意味らしく、一卵性双生児のふたりで作品を制作しているらしい。




さて写真展はというと……。ミゲル・リオ=ブランコの写真は、とても微細な世界を赤を中心とする色彩豊かなセンスで撮り上げている。東京を撮っているのに異国みたいだが、いわゆる外国人がオリエンタリズムジャポニズム剥き出しで日本を観るようなのとは全然違う眼差しが感じられて、新鮮でした。一方、サンパウロを撮った森山大道はというと、彼自身が映っている映像作品が面白い。街をふらりふらりと歩きながら、パシャパシャと群衆にカメラを向ける。対象との距離の取り方がとても興味深い。ほとんど盗み撮りのような、スリル。