ルビッチ『天国は待ってくれる』


昨日、サッカー観戦の帰りに足を挫いてしまって、歩けない状態に。怪我とか珍しいからまるで台風が来た時のような気分でちょっと休養を楽しんでおります。痛いけど。ほんとは横浜行くつもりだったけど。



さて『天国は待ってくれる』。去年公開された日本映画のタイトル、ではなくて、エルンスト・ルビッチ監督が1943年に製作したソフィスティケイテッド・コメディ。ルビッチ唯一のカラー作品だそうで、ただし戦争との絡みもあって日本初公開は1990年。シモキタのビデオ屋にあるルビッチ作品で唯一DVD化されていたのでこれを選んだわけですが、も、号泣。ひさびさ泣いたわー。


「自分は女性を泣かせてきた、だから地獄行きは当然だ」と考えている好色な老人ヘンリーが、閻魔大王のもとに行って「どうぞ地獄に送ってください」と殊勝に言うのだが、忙しい閻魔様はちゃんと調査ができていないので「とりあえず待て」という。そこに老婆が駆け込んできて「アタシを地獄に送るのは何かの間違いじゃないの!」と息まく。実はその老婆は昔ヘンリーとどこかで会ったことのある美脚の持ち主だった。「おお、君はたしか……すばらしい美脚だったね」と思い出すヘンリーに、「今でもそうなのよ! 見せてあげる!」と陽気な老婆はそのスカートをたくし上げようとするのだが、見かねた閻魔大王は「せっかくの美しい思い出が台無しだ」と宣告して老婆をその場で地獄送りにしてしまう(いきなり足下がパカっと開いて老婆はその穴に堕ちて行くという古典的なワナ、笑)。……というこの冒頭ですでにかなり面白いシチュエーションが展開されているのですが、そんな顛末もあってヘンリーの女性遍歴に興味を持った閻魔大王は、話を聴かせてくれとせがみ、ヘンリーは「では……」と言って少年時代からの思い出を語り始める。いやーこれが、笑いあり、涙あり! じんわりと全身が痺れるような心温まるお話なのです。




ちなみにヘンリー役のドン・アメチーは、ダン・エンクロイドとエディ・マーフィーのあの名作『大逆転』で、「環境が人間を作るという理論が正しいかどうか」の賭けをするために彼らをダシにしたあの老兄弟のひとりなのだという指摘がネットにあって、びっくり。なるほど、似ている。たしかに、似ている。(←まあ本人なんだから当然だけど。)あとヘンリーの祖父役として出てくるチャールズ・コバーンが脇役ながら存在感大。駆け落ちのシーンのはしゃぎっぷりとか楽しすぎます。「お前の娘はもらったぜ!」みたいな(笑)。ジジイ、いかしてるぜ。