裏窓


ヒッチコックの『裏窓』(1954年)。中庭に面したアパートの住人たちが、いくら暑いからといってここまで開けっぴろげではないだろうとか(なにしろ彼らがブラインドを下ろすのは殺人とセックスの時だけなのだから)合理性に欠けるところが多くてツッコミどころは満載なのだけど、裏窓を通して一方的に覗き観ているようでありながら、いつこちらも相手に観られるかわからないという点では、緊張感のあるスリリングな映画。美しいグレース・ケリーの蛮勇っぷりとか、安楽椅子探偵ならぬ車椅子探偵のジェームス・スチュアートのへたれっぷりに思わず身を乗り出して「バカ!」と叫びたくなる。(そうさせるだけの何かがある)


カメラ位置は一部を覗いてずっと同じ部屋に置かれているのだけど、裏窓から見える各部屋をズームして、そのあと車椅子探偵の部屋まで移って行くロングショットは面白くて、たぶんあれによって実際よりも広くあの空間が見える。あとは小道具としての電話。あれも空間を拡げるよなー。


裏窓 [DVD]

裏窓 [DVD]