ポケットフィルム・フェスティバル2009


東横線に乗って馬車道で降りて、ポケットフィルム・フェスティバル(2日目@東京芸大横浜校地馬車道校舎)。兄は最近「ケータイ小説があるなら、ケータイ映画もあっていいはずだ!」とかって思いつきで「ケータイ映画を撮りたい!」なんて方々で言い回ってるんですけど(映画人の前で言うのはさすがに恥ずかしいので止めてほしい、、、)そしたらHEADZのアニーさんが「こんなイベントがありますよー」と教えてくれたんだそうです。


で、早起きして横浜に潜入。(遅刻したけど、つーか横浜遠い)


たとえばエキソニモの『1.5の夜』。これはQRコードを利用したもので、パフォーマンスとしてはすごく面白かった。そう来たかと。アイデアが面白い、という作品は他にもたくさんあって、ただ、いわゆる「映画」を感じたのは中原昌也の『適当な映画』くらい、あとはどんな優れたアイデアも、一発勝負の「映像」の域を出ていないって印象がどうしてもあって、ただそう言っちゃうと「映像<映画」みたいな、それこそ文学至上主義っぽい保守的な考えになっちゃうのかもしんないけど、んー、だって今日は「映画」を期待してたからなあー。呼び方はどうでもいいんだけど、とにかく力のある映画が観たかったんです。


なので、前半のシンポジウムに出てた村井純さんが、「技術の革新で芸術はいろんなことができるようになるし、しかも技術の革新は必ずできる、だから芸術家の諸君、がんばってくれたまえ、がはは!」みたいなことをいくら仰っても、その技術革新によって生み出される「芸術」なんて、せいぜい薄っぺらい「芸術もどき」にすぎないんじゃないかなー、って気持ちがずっとぬぐえなくてノレず。


たしかに、よくできたもの(well-made)、キレイなもの(clear)、可愛いもの(pretty)、であれば、技術革新で解像度があがることによって、より生まれやすくなるかもしれない。そして、よくできたもの、キレイなもの、可愛いもので周囲の日常を満たすことは、きっと今よりずっと簡単になるだろう。それはそれで幸せだと思う。少なくとも、擬似的な幸せ要素に充ちているように思える。でも、それでもどうしても足りない、空洞だ! って時に、そこんとこを埋められるかもしれないと希求されるもの、そのために意匠をほどこされた七面倒くさいものを、私たちはかろうじて「芸術」と名付けることで、どうにかこうにかのらりくらりと生きてきたんじゃないか。としたら、果たして技術が向上すればオッケー牧場、技術があればなんでもできる、みたいな、そんなリニアな考え方でいいのかしら?とか、とか、とか、ぐるぐる考えてもやもやしてたんですよね。




でもその前半のシンポジウムが終わったあとに、各国のポケットフィルム・フェスティバルで上映された作品を観たんですけど、その中に、2008年にフランスで上映されたという、コンゴキンシャサを舞台にした映像があったんです。そこには何かしらひっかかるものを感じて。黒沢清監督が参加された後半のシンポジウムも、そのキンシャサの話から非常に盛り上がって、思わず身を乗り出す感じになりました。終盤の質疑応答では、フェスティバル主催者の方々の熱い気持ちも伝わってきたし、逆説的にとはいえ「映画とは何か」という根本的な問題を扱っているようにも思われて、すごく刺激的な討論だったと思います。兄も例によって質問というか意見を述べてました、、、なんというか兄は、こういうアウェイな状況のほうが、むしろ快楽の回路を刺激されるみたいで。


ところで、そのキンシャサで撮られたっていう、Kiripi Katembo Sikuの『Voiture en carton』は以下で観られるんですけど、

http://www.festivalpocketfilms.fr/article.php3?id_article=902


あれ? ちょっと、全然見え方が違う!と思って、やっぱりスクリーンで観るのと違うのかーとか思ったんですけど、そうじゃなくて、そもそも編集が違ってませんかこれ? バージョン違い?


最後に、各国のポケットフィルム・フェスティバルのリンク集を貼っておきます。黒沢さんはこれらのポケット・フィルムをけっして「映画」とは呼ばず、「映画みたいなもの」としか言いませんでしたけど、とりあえずいろいろ観られて楽しいし、まず撮ってみる、というところから何が生まれるかというのは、私としてはちょっと気になります。


(フランス)http://www.festivalpocketfilms.fr/
(カナダ) http://www.mobifest.net/
(イタリア)http://mauxa.com/cortofonino/
(ロシア) http://glazz.ru/
(日本)  http://www.pocketfilms.jp/