いよいよ最終日!


北京のドキュメンタリー作家Mくん(詳細はテルポ3参照)からひさしぶりにメッセージがきて、それがちくしょーって感じの内容だったんですけど、まあ元気でよかった。……それはさておき。いよいよ明日、桃まつりの最終日です! その中のひとつ『クシコスポスト』について兄がテルテルポーズ3に書いたものがありますので、期間限定で明日までここに転載することにしました。後半のみの、しかも超省略バージョンでの掲載です。連日盛況の桃まつり、未見の方は明日(金)までなのでお見逃しなく。最終日のプログラムは竹本直美監督『地蔵ノ辻』、長島良江監督『それを何と呼ぶ?』、別府裕美子監督『クシコスポスト』の3本で、ユーロスペースにて21時から。

http://www.momomatsuri.com/


まずは桃まつりpresents kiss!全体についてのくだりから。

 さて、わけのわからない話はやめて「桃まつり」に戻ろう!  批評誌「アラザル」メンバーの紅一点、畑中宇惟による全作品レビューのページに詳細を記したように、この上映企画は3 月14 日から渋谷ユーロスペースにて上映されるほか、今後大阪や、また一部の作品はドイツなどでも上映されるらしい。各作品の感想を様々な人に聞いてみたところ、てんでバラバラなのが面白かった。観る人によって評価する作品がここまでバラけるのは、それだけこの「桃まつり」が、もはや「女性」という言葉で括る必要さえないくらいの多様なバリエーションを、すでに備えているからだろう。「世界」から切り離されてしまった私たちが、どうやって関係性を取り戻していくのか? 短編とはいえ、それぞれの物語の出発点がそこにはある。


 今回、その天才ぶりをいかんなく発揮してほとんど余裕さえ窺わせているかのような(とはいえ作品の完成はギリギリだった)瀬田なつきの『あとのまつり』については、葛生賢さんが素晴らしい「スコリモフスキ→瀬田なつき」論を書いてくれたので、そちらをご覧いただきたい。「愛とは(批評とは)つまり、近づきたくて近づくのだが、ついには手に入らない何かである」ということを痛感させられる文章だと思う。


つづいて、『クシコスポスト』について。ただ肝心の部分は、ネットにそぐわない気がするので省略します。

 そして私は、「桃まつりpresents kiss!」9作品の中でもっとも「キス」からポップに逃走してみせた、別府裕美子の『クシコスポスト』について書いてみたい。瀬田作品よりもさらに幼い少女を主人公にしたこの作品は、「キス」といえばただちに恋愛と結びつけてしまうような私たちオトナのリニアな思考回路に対して、ロマンティックラブ幻想が流布する以前の、プリミティブな愛(世界の恢復)の可能性を突きつける。(……だいぶ中略……)そんな少女が、「ロン、インパチ!」と宣言しながらおぼつかない手つきで(しかし堂々と)麻雀牌をパタッと倒す仕草は、何度観てもうっかり萌える。


 物語は予期せぬ形で動き出す。「フル〜ツ〜、フル〜ツ〜、おいし〜いな〜♪」というチープなテーマ曲とともに颯爽と原チャリで登場した露天の果物売りのお姉さんと仲良くなった三奈は、彼女がきっと母親になってくれるものと信じ込み、6 体目の〈てるてる坊主〉を作って新たに屋上に吊るす。だが、この孤独な少女の願いは天まで届くのだろうか?


 詳細はぜひ、このあと奇想天外の展開をみせる映画本編を観ていただきたいのだが、そのクライマックスでは、いよいよ、見せ場であるはずの「キス」が登場する。この狭い屋上の、しかしどこまでも広がる空の下で、彼女はその拙い語彙で、愛に関わる何ごとかを呟くだろう。とはいえ、いまだ恋愛感情を知らない8 才の少女にとって、キスとは、愛とは、何を意味するのだろうか? そして映画は、どこに着地する? 


 ラスト、ユーモア溢れる軽妙な音楽に乗って「世界」をじっと見つめるこの少女は、まさにあの運動会のテーマ曲「クスコスポスト(郵便馬車)」のイメージそのままに、オトナのキスの魔の手から、鮮やかに逃げ切ることに成功する。

明日の3作品はどれもテイストが違うので、なにかしら引っかかるものがあると思います。と、宣伝するまでもなく連日の盛況のようなんですけど、明日はほんとに最後の最後なので。この「まつり」をぜひ目撃してほしいです。私たちも観に行くと思います。