飲みたい
今日はなんだかやることがたくさんあって、大方は黙々と仕事をしていた。疲れたら本を読んだ。カレーを作った。そして夕方は久しぶりに近所に走りに行った。気持ち良かった。駅伝のおかげでだいぶエネルギーが強化されてるっぽい。シノダに借りたEKDの「Para Todos Todo」を聴きながら走っていたらいろいろ考えた。いいかげん妹帰ってこないかな、とかそういうことも考える。
で、さっき思い至ったんだけど、「りたーんず」の演出家たちにわりと共通してるのは、確固たる後ろ盾がないことじゃないかなと思ったりした。いやもちろん、所属するカンパニーがないわけじゃないし、先輩とか、リスペクトする人とか、協力者とか、そういう人たちはたくさんいるんだけど、いわゆる後ろ盾みたいな、なんか強力な庇護者であり、同時に制約ももたらすような権力者が存在しない……というか、後ろ盾はなにも「人」に限ったことじゃなくて「組織」でもいいのだけど、そういう種類の権力が背後にない……
……というのは今読んでるある小説の主人公が、ずっと目に見えない組織？ いやシステム？とも何ともよくわからないものと徒手空拳で戦っているのだが、その戦う時のルールみたいなのがあって、それは、様々にあの手この手でやってくるシステムの誘惑みたいなものに、決してそのままの形で乗ってはいけない、その瞬間に彼はきっとワンノブゼムの村の住人であり、ひとりの（職務に忠実な）労働者になりさがってしまうのだが、ただしまったくその誘惑を拒絶してもコネクション（道のり）が絶たれてしまうので、システムの手先となる人物たちのあいだに綻（ほころ）びを見つけて、そこを手がかりにシステムの内側（といっても周縁）に侵入することでかろうじて中心への道のりを保っていく、という不毛な闘いを延々繰り広げている。たぶんそれを読んでるからそう思ったりするのであって、この勝手な考察は「りたーんず」とはほとんど関係ないことかもしれない。
とはいえその勝手な妄想のもとに、そうした権力の不在が彼らの、「りたーんず」の人たちの、演出家としての独立心というか、自律した感じ、そして言ってしまえば自由な感じ、をもたらしてるという推測を進めてしまうと、じゃあ彼らが深い孤独を抱えた近代的な個人であるかといえば、むしろすっきりただ「ウィー！」とか言って（表面上は）空っぽだったりするし、全然仲いいし、でもここがたぶん大事だけど、お互いにほとんどまったく空気を読まない……！ 基本的に言いたいことを言い合って、時にはカレーを投げつけたりもするわけなので（笑）、仲がいいと言ってもいわゆる一般的な仲良し像とは全く異なるのだが、幾度もそうやって喧嘩になりながらもそこで関係が完全には破綻しないってのは、どこか根っこのところで（お互いの作風とかってことではなく）演出家として認め合ってるからじゃないかって気はする。……でもそれも嘘で、たまたまウマが合ったというだけの、偶然の幸福が重なった結果にすぎないのじゃないか。ただ雑誌「りたーんず」に演出家の相互インタビューってのが載ってるんだけども、この関係性というか、距離感というか、うまく言い表せない感じがまた……。
いやそれにしても、こうやって言葉を重ねれば重ねるほど空しくなっていくのはなぜだろうかね？
こないだ「エクス・ポ」の取材で会ったばかりなのに、すでにまた酒でも一緒に飲みたくなってきた。それこそが今一番したいことだということは、いまや明白な事実だった。公演が終わった直後は「しばらくこれでもう会うこともあるまい」みたいな気分だったんだけど、今はむしろ会って、飲んで、他愛もないことから人生の重大事まで、えんえん語り合うのが（あくまで勝手ながら僕にとって）よろしいのではないかという気もしないでもない。ゆうべまたロビーの夢を見た。あの場所に居すぎてどうもおかしくなっている。実際問題、ほんとは別に↑で書いたことなんてどうでもよくて、一緒に飲めて、しかもなんとなく次に繋がっていく予感が持てればまあそれでいいかって思うし、特に一緒に↑のような話をしたいとも思わないけど、「次の悪だくみはどんな感じなの？」とか、そういう話が酒でも飲みながらダラダラとできれば、それ以上何を望むべくもあろう。そして身の回りに起きた珍事とか、人生の壮大な妄想絵図についてなどなど、話すともなく話したいのだった。というか、聴いてるだけで横でずっとビール飲んでるとかでもそれはそれでいい。そういえばダニエル君（今村君）とも、「話をしましょう」とか言いながら結局まだエロ本の話しかしてないのだった……。
幸いにして！（というのは、宣伝ではないよ、と宣言しつつ宣伝であることを暴露してしまっているような感嘆詞だが、）今週木曜、14日の夜に、渋谷のアップリンクで「劇談、土佐有明。」の第２回があり、そこに「キレなかった14才♥りたーんず」の面々が出るので、楽しみにしてます。
