訃報が流れてくる。


とある訃報に接する。訃報が、つぶやきとして流れてくる。その人とはなんらプライベートな関係はなく、単に店の主人と客、というだけの関係で、しかもここ2年くらいは店からも遠ざかっていたので、それについてどうこう言う、ということもおかしい、のかもしれない。だがやはりショックで、それはもうあの味が食べられない、ということだが、それだけでもなく、その若すぎる、唐突な死が誰にでも訪れることに愕然としたのもあるし、結局彼という人間が、何者かよくわからないままであったということに、他者の不可解さというより、他者というものが根本的に不可解な存在であるということに、気づかされたりもして。


美味いものを出して、それを金を払って食べる客がいる。それを一連のシークエンスと捉えるなら、彼の生み出すそれはあまりに美しかった。