赤線地帯


溝口健二の遺作(1956年)。売春防止法制定前夜の吉原を舞台に、女たちの生きる哀しみを描いた。一人息子との同居を夢見る三益愛仔が、その息子に町はずれの工場で拒絶されるシーンがあまりに壮絶。売春という仕事をめぐっては、政治家、業者、客、父、そして息子、それぞれの言い分とその正当化があるばかり。客観的な善も悪もないこの世界において、女たちは最後まで”言われっぱなし”の状態で宙づりにされたままであり、そこから抜け出すためには経済的な成功を収めるか、あるいは狂気の領域に旅立つかしかない。観客がこの映画に対して何かしらの一方的な解釈を施すことは、きっと難しいだろう。黛敏郎の現代音楽(黛敏郎)が、そうした宙づりの雰囲気をさらに強める。


赤線地帯 [DVD]

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