コントレ映画塾、開講


えーっと突然ですが、諸々の理由により映画をたくさん観たいと思いました。理由は省きます。今ここで言う必要もないでしょう。


さて映画を観るといっても、フツウのペースで観るのであれば別に今までと変わらないので、どこから始めて、どう進んでいくのか、何かしらの指標が欲しい。そう思っていたところにcontre champの葛生賢さんと飲む機会が何度かあり、「映画で肉体改造したい〜」とごねていたところ、結局ご厚意で、映画初心者向けのリストを送ってもらうことになりました。最初は100本とか言ってたんですけど、さすがに最初からそれではハードルが高いので、まずは10人の監督リストから始めることにしました。


名付けて「コントレ映画塾」*1のルールは、

1)まずこの10人の映画作家の作品をなんでもよいので1本ずつ観ること。
2)その際、短くてもいいので何かしらのレビューなり感想なりを書くこと。
3)それをもとに、その10人に順位を付けること。
4)その順位の上から順に借りられるだけのDVDを観まくり、レビューや感想を書くこと。(*このルールは「映画はやっぱり楽しむものだ」という観点から後に改訂され、順位はさほど気にせず、またじゅうぶん観たと判断した時点で次の10人に向かってよいことになりました。)
5)観終わったらまた新たな10人のリストをもらって(1)に戻る。


というものです。とはいえ、下で公開するその10人の名前を見ただけで、最初はほんとにやれんのかなコレ〜と不安になりました。というのもそのリストに載っていたのは古典的な巨匠の名前ばかりで、1本や2本ならまだしも、さすがに何本も観続けるのは退屈するんじゃないだろうかと。でも幸いにしてそれは杞憂でした。*2さすがにそればっかり観てると前衛的な匂いが恋しくなってきますが、とはいえ全然おもしろかった! ……という、その最初の10人のリストと、僕が勝手につけた順位は以下のとおりです。個々の作品は僕が恣意的に選んだもので、葛生さんが指定したわけではありません。

1 成瀬巳喜男         『稲妻』
2 ハワード・ホークス     『赤い河』
3 アルフレッド・ヒッチコック 『白い恐怖』
4 マキノ雅弘         『次郎長三国志』
5 エルンスト・ルビッチ    『天国は待ってくれる』
6 山中貞雄          『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』
7 ジョン・フォード      『駅馬車』
8 溝口健二          『赤線地帯』
9 ジャン・ルノワール     『スワンプ・ウォーター』
10 小津安二郎         『東京物語』


1位、2位はダントツの衝撃。3〜5位と、6〜8位はそれぞれ甲乙つけがたいところです。とくに溝口の『赤線地帯』なんて場合によったら1位でもいいくらい。また9位のルノワールは作品が不利な条件だったかもしれません。10位に関しては、これは現時点では判定不能、ということで、10位というより番外扱いです。あまのじゃくな性格が災いして、ついこういうことにしてしまった、ところもあるかも。




さてコントレ映画塾は、すでに一巡してそれぞれの監督の作品をもっと観ていく段階に突入しています。まあぼちぼちマイペースでやっていきますので、あまり過剰な期待は(しないでしょうが)しないでください。*3最後に、師匠役を心よく引き受けてくださった葛生賢さんに、この場を借りて感謝いたします。拙い鑑賞をすることがほとんどだと思うので、思う存分、愛のムチをふるっていただければと思います。



 

*1:実際にはcontrechampは「コントレ」とは発音しないのですが、まあそれが通り名のようになってるのでそれでいいですと葛生師匠が仰るのでそういうことになりました。あと「コントレ道場」っていう案もあったんですけど、あまりにも男っぽい修行僧のようになってしまうのでやめました。

*2:最初の10人はほとんどもはや権威的といってもいいくらいのビッグネーム。できるだけフラットに観たいとは思うけれどそれはおそらく不可能なので、その権威性を認めた上で(崇拝とかじゃなく)それをどう料理していくか、という戦略をとらざるをえないでしょう。いずれにしてもこの試みは、映画に関する教養を僕が身につけていくというよりも、むしろ映画における教養主義のごときものを、それがあるとすれば解体し、古今東西の膨大な「映画史的記憶」の中で、自分なりの航海図を描くことにあります。……とか言いながら、ほんとは純粋にいろいろ知りたくてウズウズしてるってだけなので、あんま大きいことは言えないんですけど。

*3:今のところ塾生はただひとり僕だけですが、もしも、これから映画をいろいろ観てみたいという人がいたら、師匠からもらったリストは公表していくので、勝手に付いてきたりしてもいいんじゃないでしょうか。それぞれの仕事や生活の都合もあると思うので、参加できる範囲でってことでも構わないと思います。僕もせっかくなら弟(兄)弟子とか妹(姉)弟子とかが欲しいし。ただもちろん、どこかからデビューできるなどといったような世俗的栄誉はなんら約束されるものではありません。